先日、あるお葬式をご奉仕させていただいたときのことです [00:28]。亡くなられたお母様のお戒名は「◯◯信女(しんにょ)」、以前亡くなられたお父様も「◯◯紳士(しんし)」というお戒名でした [00:28]。
その際、娘様から「私も生前戒名をお願いします」とお申し込みをいただき、こんなご質問を受けました [00:45]。
「住職、私の両親には『院号(いんごう)』がついていないんです。でも、私が生前戒名で院号を授かれば、家族みんながその院号(苗字のようなもの)になるんじゃないですか?」
お戒名や院号を「家族でお揃いの苗字」のように捉えられている方は、実はとても多くいらっしゃいます [01:17]。 今回は、なぜ戒名に「ランク」と呼ばれるような違いがあるのか、その長い歴史とお布施の本来の役割について、ホームページでも共有させていただきます [00:01]。
戒名の歴史:本来の文字が持つ意味
「戒名のランク」と言われるものは、一朝一夕でできたものではなく、仏教の長い歴史の中で変化してきたものです [01:22]。
- 「紳士・信女(しんし・しんにょ)」 本来は「仏教の教えを信じる者」という意味であり、仏弟子となった方は誰しもが授かる素晴らしいお戒名です [01:41]。
- 「居士・大姉(こじ・たいし)」 インドの古いお坊さんは、各地を巡って修行(遊行)をしていましたが、高齢になると動けなくなります [01:55]。そこで家(庵)を建てて隠居暮らしをしながら仏法に励んだ「徳高い長老」のことを、本来は「居士」と呼びました [02:06]。およそ60歳以上の、地域を支えた立派な方への敬称でもあります [02:16]。
- 「院号(いんごう)」 さらに上の文字とされる「院」は、もともと天皇陛下が「◯◯院」というお寺(伽藍)を自ら建立されたことに由来します(例:嵯峨天皇の嵯峨院など) [02:37]。お寺を一つ建てるほど、仏教と社会に多大な貢献をした証だったのです [02:50]。
「院殿(いんでん)」はさらに上?
歴史上の武将、例えば足利尊氏などは、一族の繁栄を願ってお寺(等持院など)を建立しました [03:03]。尊氏の戒名には「等持院殿…」と「院殿」の文字が入っています [03:32]。 現代では「院殿」が最高クラスだと思われがちですが、当時は「天皇陛下と同じ『院号』をそのまま名乗るのは恐れ多い」として、天皇陛下より一歩下がった敬称として「殿」をつけたという、日本人の謙虚な歴史の背景があります [03:46]。
なぜ金額によってランクが変わるのか?
現代のお葬式では、「院居士だと100万円」「紳士だと30万円」といったように、お布施の額によって戒名の文字が変わる仕組みに不信感を持つ方が少なくありません [05:08]。先日も「院居士を頼んだら300万円と言われた」と駆け込まれた方がいました [05:23]。
なぜこのような差があるのでしょうか。それは、本来お布施が持つ「支え合い」の精神にあります [05:36]。
お寺は「みんなの心の拠り所」
浅草の浅草寺をはじめ、お寺は昔から誰しもが平等にお参りできる場所です [06:29]。「お金持ちだけを救うお寺」なんてありませんし、お金があってもなくても、みんな平等に手を合わせることができます [06:34]。
しかし、あの大きなお堂や境内(伽藍)を維持・管理していくためには、どうしても膨大な費用がかかります [07:02]。
【橋をかけるときのお話】 例えば、みんなで川を渡るために「橋」を架けることになりました。 全員一律で「1人100万円ずつ出し合いましょう」となったら、経済的に出せない人は橋を渡れず、冷たい川を泳がなくてはならなくなります [07:24]。 そこで、あるお金持ちの方が「みんなのために、私が1億円出しましょう」と名乗り出てくれたらどうでしょうか [07:53]。おかげで、お金のない人もみんなが平等に、安全にその橋を渡ることができるようになります [07:59]。
お布施の本質もこれと同じです [08:05]。「院号」を授かるような経済的余裕のある方が、大旦那(大きな支え手)としてお寺を財政的に支えるためにお布施を包んでくださる。それによってお寺が維持され、地域のみんなが平等にお参りできる場所が守られているのです [06:12, 08:19]。お布施は、みんなが幸せになるための社会還元として使われています [08:26]。
本寿院の「お布施一律」へのこだわり
お布施の仕組みに美しい支え合いの理念がある一方で、現代では「お布施の額で差別されているように感じる」「親が院号なのに、不景気で子供の代には同じものを授けてあげられない」と苦しまれるご家族が後を絶ちません [09:50, 10:20]。 お戒名がバラバラであることや、高額なランクの差によって、残された子供たちが「親に申し訳ない…」とずっと心の負担を抱えてしまうのは、仏教の本意ではありません [10:38]。
だからこそ、私ども本寿院では少し変わった取り組みをしています [09:14]。 当院では、お布施の金額によってお授けするお戒名の種類(ランク)を変えることはいたしません [09:20]。どのような方であっても、生前戒名のお布施の目安は一律(3万円)とさせていただいております [09:27]。
お戒名とは、本来「すべての文字を合わせて2文字」の平等な仏弟子としての名前です [09:37]。お寺が戒名を「販売」しているわけではありません [09:50]。ご家族のこれまでの歩み、背景、そして経済的なご事情も含めて、一人ひとりのご相談にじっくりと耳を傾け、一番ふさわしいお戒名を授与させていただきます [10:02]。
最後に
私たちは、亡くなった方が家族にとっての「邪魔者」として忘れ去られるのではなく、「仏様となって、残された家族をいつでも、いつまでも優しく見守ってくれる存在」になるのだと考えています [11:19]。
「他のお寺で高額な費用を提示されて悩んでいる」「先祖のお戒名とバランスを合わせたいけれど、どうすればいいか分からない」という方は、どうぞ一人で抱え込まずに、いつでもお気軽に本寿院までご相談ください [11:00]。皆さんの心の荷物が少しでも軽くなるよう、一生懸命お手伝いさせていただきます [11:00]。
今回の内容はYouTube動画でも、私の言葉で詳しくお話ししています [11:39]。ぜひ合わせてご覧ください。
▼ 動画はこちらからご視聴いただけます https://youtu.be/RBTcJ1aJxq4
(※動画が参考になった方は、ぜひ「いいね」ボタンやチャンネル登録、コメント欄へのご意見・ご質問もお気軽にお寄せください! [11:39])
