最も長い戒名は、徳川家康
「東照大権現安国院殿徳蓮社崇誉道和大居士」(19文字戒名です)
なんと長い戒名なんでしょう。
覚えるのも大変ですし、法要の時読み上げるのも大変では?と心配になってきますね。
大丈夫ですよ
戒名の成り立ちを見ていくと、意味が解ってきます。
まず、戒名は「道和」となります。たった二文字です
戒名は、すべての宗派共通で2文字です。
この戒名は、戒律を授かった時に頂く法名であり、仏弟子としての授戒名です。
家康の幼名は竹千代。通称は次郎三郎のちに蔵人佐。諱は今川義元より偏諱を受けて元信(もとのぶ)次いで元康と名乗るが、今川氏から独立した際に「元」を返上して家康に改めたとされています。そして、浄土宗で授戒して法名が「道和」となったのです。戒名の意味については、別のページにて解説します。
では?その前後は?残りの17文字は何?
戒名を見た後、次に見るのは、
位号である「大居士」
居士とは、居を構えて住んでいたという意味があります
インドでは僧侶は、一定の場所に住むのではなく、放浪していました。もっとも、日本のような季節環境があるのではなく、雨季と乾季によって移動せざるを得なかったという意味合いもあります。
しかし、年を取ると、移動も困難になり、家を建てそこに住んでいた老人を意味します。別には、家を建てて住むことが出来る程のお金持ちともいえます。(お金持ちというと、坊主丸儲けとイメージされる方が多くありますが、元来僧侶は経済活動をせず、自分の所有するお金は持ち合わせていませんでした。ですから、自分が建てたのではなく、信者さんたちの寄進によって大きな建物が出来ていたといわれます。
いずれにせよ、居を構えるぐらい、経済的にも困ることなく、安定し、長老として導いてこられたという意味合いがあります。それに「大」が付きますから、相当なものです。
まあ、通常「大居士」がつく人はおられません。
ちなみに、生前戒名を希望されたある会社の社長さんから「院殿大居士」で戒名を付けてくれと依頼があったことがあります。
俺は、一代で会社を築き上げてきたので、最高級の戒名を付けてほしいとの依頼でした。
通常であれば、院殿大居士など付けるのは、僧侶でも一生のうち1名ほど、いやほとんど付けることはないでしょう。
もし、普通のお寺で付けると断られるか?本山預かりとなり、戒名料でいうと数千万円クラスとなるのではないでしょうか?
(当院では、種類に関係なく3万円としておりますので3万円でしたが・・・)
はっきり申し上げて、そんな戒名を授かることは譽な事ではなく、おかしなことだといっても良いでしょう。
では、なぜお授けしたのか?それは、生前戒名だったからです。
没後戒名(亡くなってから授かる戒名)であれば、お断りしておりましたが、生前どうしてもつけてほしいと依頼でした。
もちろん、その戒名についてきちんとお話ししたうえで納得の上お授けしております。
本人が、そのことに気づき、あまりに良すぎる戒名を自慢するか?いやそれよりも、この戒名にふさわしい人物になろうとされるか?
私は、俺の戒名ってこんなに立派なんだぞと自慢してもそれは、何も自慢になりません。
それよりも、戒名を見た時に、この方の生きてきた生き様があらわれている。その人そのものだ。と偲べるような戒名が素晴らしいと思います
ですから、その方が、これにふさわしい戒名の人間になるためにも、社会の為、人の為にこれから尽くされることを願ってお授けした次第です。
ちょっと話がそれてしまいました。徳川家康に話を戻しましょう
次に見るのは、東照大権現
これは、家康に朝廷から東照大権現の神号が授けられたという意味です。
日光東照宮といった方がお分かりになると思いますが、これは戒名ではなく「神号」です。
仏教と神道は、別だと考える方が多くありますが、そうではありません。
東照宮には、輪王寺があり、比叡山には日吉大社があり、お寺と神社は神仏混合で一緒でした。我々の修法でも、地の神 山の神を招請して祈願をします。
明治時代になり、廃仏毀釈となり、神仏分離されるようになりました。
次に安国院殿 院号とは、
お寺を建てたという意味があります。家康が建てたお寺は多く、その中でも有名なのが増上寺であります。
境内の家康公を祀る廟は、安国殿と称されていました。
院殿号というものは、足利尊氏がはじめとされますが、天皇陛下より一歩下がって殿を付けたとされています。ちなみに「等持院殿」
家康の場合、安国院という文字を見ても、安らかなる国を治めたとみることもできるのではないでしょうか。
次に徳蓮社とは、 浄土信仰を抱く人々の念仏結社を意味します。また 浄土宗で用いる法号の一種で宗義と戒の二つの伝統を受け、一宗の蘊奥(うんのう)を極めたものに授けられる佳号。また、貴人などの戒名の下に添える語。とされています。
崇誉の「譽号」について
浄土宗では生前 五重相伝や授戒会に参加して戒名が授与されています。五重相伝とは、義の真髄を五段階に分けて解説伝授する宗門重大行事であります。
善導大師が観無量寿経の(念仏を称える者は)人中の分陀利華である。との語を解釈して(人中の)好人、妙好人、上上人、希有人、最勝人である。と五種に嘉誉されたことに依るとされています。浄土宗第五祖、定慧上人が良誉と号されたのが最初であり、「誉」を使われることがある。「譽」は高位な戒名とされ、一般ではなかなか授けてくれない称号です。
おわりに
このように、19文字の戒名を分解すると、その意味合いについて理解することが出来ます
ただ単に文字を並べているだけでなく、その方の生きてきた生き様であったり、人生があらわされていることにお気づきになる事でしょう。
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